第1章 歩く姿は… 【不死川 実弥】
「わかったから早く食え、一緒に食べたかったから買ってきたんだ」
不死川様が時々私に向けてくる優しさや表情に、私の中で淡く芽生えている気持ちが同じなのではと期待させる
「…はい、いただきます」
やっとじっくり味わいながらカステラを噛みしめる
「ん~ しっとりして美味しいです!塩味がいいですね!塩味が!」
ちょっと前のめりで感想を言うと
「小波瀬は本当に美味しいそうに食べるな」
「食いしん坊だと思ってますね?」
「違うのか?」
「…違わないです」
「違わないですけど、食いしん坊は女の子としては恥ずかしいです」
「そうか?食べさせがいがあるよ」
「甘露寺も気持ちいいくらい食べるからな」
甘露寺さんは特別可愛いんだけど…
「その春画は面白いのですか?」
食いしん坊の話題をそらしたくて聞いた
「これは今までの風柱達が書いた日記と言うか覚え書きみたいなのだ、まだまだ強くならないといけねえからな、絶対に無惨を俺達の代で倒しす。その為のヒントがないか時々読み返してる」
お館様と鬼狩りの話をする時は少し遠く感じて寂しくなる
下働きに入って始めはあまり話すこともなく、鍛練の時の気迫を見たら震えるほど怖かった。
それをなんとか不死川様の事を知る為に、御八つ時間を作り会話を増やして冗談を言えたり、少しだけ本音が聞けるまでになった
「応援しかできませんが、私も頑張ります」
ギュッと拳を握りしめた
「がんばる?」
「美味しくて栄養のある食事です、健康面で手助けできればと努力します」
「今でも十分美味しいよ」
「!!」
またこの人はこんな事を計算なく言うんだから…
「今日は不死川様の好きな鴨鍋にしましょうか?」
「たまには誉めてみるもんだな」
憎まれ口をたたいて嬉しそうに笑った
空の湯呑みを片付けながら
「これを片付けたら出ますね、蝶屋敷にも寄って来ます」
「蝶屋敷?」
「はい、薬草の調合を頼まれて材料を取りに行くだけなので遅くはなりませんから」
「それでは失礼いたしますね」
片付けを終わらせ身仕度をととのえ玄関に向かうと不死川様がいた