第5章 恋に落ちる【不死川玄弥】
鬼の首を斬ろうと日輪刀を構えると、あの日人殺しになってしまった手の感触が甦る
これは本当に鬼なのか?迷ってしまう…
「昨日、任務に実弥と行ったの」
風柱 不死川実弥 は瑞穂の同期であり同門だ
「その時に迷ってしまったの」
迷った、振り落とす刀が止まり隙を見せた時に茨のような触手で攻撃を受け髪を散切りにされた
「実弥が首を落としてくれたけど殴られた」
「えっ!」
散切りの髪ばかり見て瑞穂の顔を見ていない
玄弥は抱きつく瑞穂を引き剥がし顔を覗いた
確かに顔が腫れて口を切っていた
「兄ちゃんが…ごめん!」
この時に初めて玄弥は自分から手を伸ばして瑞穂を抱きしめた
「殴られたのは大丈夫…実弥が同じように斬れなかったら私も殴ってるから」
玄弥の腕の中で瑞穂はクスクスと笑う
「殴られて思ったの…私は鬼殺隊士ではもう役には立たない。だから隠になろうって…」
瑞穂に見つめられて抱きしめている玄弥の体が熱くなる
「そう決めたら玄弥に会いたくなった。ごめんね急に来たりして」
「嬉しかったよ、ビックリもしたけど」
「うん…分かってる。私はね振動を感じるの…だから玄弥が私に好意をもってくれているのも感じるよ、ずっと私の肌に響いて気持ちがいいの…」
瑞穂は玄弥の背中に手を回して、胸が柔らかく当たるように抱きしめて玄弥を見つめた
「ねぇ…玄弥は私の事好き?」
刈上げた頭まで真っ赤になった年下の玄弥を全力で落としにいく
逆上せた頭で絞り出した玄弥の声は滝の音に消されるくらいの掠れた響きで瑞穂には聞こえなかった
「私の鼓動も早くなってるの伝わる?」
十中八九玄弥は私の事が好き…それは分かる、でも玄弥の言葉で聞きたい
「ど…どうして俺なの?」
それ2回目だよ なんとも可愛らしい。自分より5歳も年上からの告白だものね
でも私は落ちたのだ
「悲鳴嶼さんと私の戦闘に必死について行く勇気に、学ぼうと目を見開き戦う姿に、
人殺しになった私が暴れ、手を焼いた悲鳴嶼さんが一発を入れ、嘔吐し動けなくなった私の胃液にまみれながら御舘様の屋敷に運んでくれた優しい響きの呼吸に」
すとん と落ちてた、ビックリするくらいに
「…恋に落ちたの。玄弥が好きなの玄弥の響きが優しいから、そばにいたいの」