第4章 私の太陽【煉獄杏寿郎】
「心を燃やせ…」
深影さんが そう小さく呟いた 悲しみだけしかなかった匂いが少し変わった
「深影さんへ…の遺言です」
深影さん…と不死川さんも目を閉じた
「この3人の少年に俺の継ぎを託した
だから俺の代わりに見守っていて欲しい 3人が安心して帰ってくる場所になって欲しい
深影が俺の光であった様に少年達の光に…」
畳んでいた隊服の内ポケットを探る
ウサギ柄の手拭いに巻かれてあった簪を取り出す
左目が大きく開かれ涙が溢れた
「深影さんと離れていた間に修理に出して受け取ってからずっと持っていたそうです
これは深影の宝物なんだ返してくれ
と言いながら握りしめて…最後は笑って逝きました」
深影さんの手のひらに転がったのは赤い珊瑚の丸玉に陶器で出来た黄色に褐色の混じった猫が珊瑚に噛みついていた
それを見た深影さんは泣きながらニッコリと笑い「ありがとう」と笑った
あぁ…これが煉獄さんの言っていた光なんだ
今目の前にいる深影さんからは悲しみの匂いが薄くなり日向のような暖かい匂いがした
「退院したら3人と妹さんも連れてこの屋敷に帰ってきてね 一緒に暮らす準備をして待ってますから…」
小指を出してきた深影さんと指切りをした
「不死川様…今の指切り見ましたよね?」
深影さんがいたずらっ子のような顔で不死川さんを見る
「…あぁちゃんと見た任せとけぇ」
なにかを察した不死川さんが俺を見る
「これで指切りを守らずに帰ってこなかったら…毎回不死川様の地獄の鍛練が待ってます」
「えっ!」
「もう指切っちゃいましたから…ね不死川様」
「俺は何時でも鍛練ぐれぇしてやんよ?」
そんなイジワルな事を言う2人からは優しい匂いしかしてこなかった