第3章 はい、あーん:同学年総北 甘
たまには、そんな姿も悪くない
3.はい、あーん
「神月!おはよーさん。」
「あ、田所くんだー。おはよう。」
彼の教室前でバッタリ出会ったのは
彼の友達で同じ部活の田所くん。
「裕介、いる?」
姿が見えない巻島を
探していた愛羅が田所に問う。
「今日休みみたいだぜ。
風邪とか、なんとか言ってたような。」
彼の一言に驚愕する愛羅。
「ウソ。数学の教科書、借りに来たのに。」
「俺の貸してやるよ。ちょっと待ってろ。」
そう言った田所はその場を離れようとしたが
愛羅が彼の手を掴んだ。
「あ、待って。
このまま早退して裕介の所に
行くことにしたから大丈夫。
ありがとー!!」
彼女は自分のクラスに戻り
カバンを持って学校を飛び出した。
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今ごろ、みんな授業受けてッショ。
巻島はベッドの上に横になり
自室の天井を見上げていた。
あ。
愛羅に連絡してないッショ。
怒るかな。
ぼんやり考えているとスーッと
睡魔に襲われていった。
夢の中で愛羅が俺の頰を左右に引っ張り怒っていた。
「愛羅?」
「裕介、なんでちゃんと連絡してくれないの?!」
「悪かったッショ。心配かけると思って。」
次の瞬間には
彼女はボタボタ涙を零していて
「ごめんね、さよなら」
と、どこかに行ってしまった。