第2章 額をこつん:同学年箱学 甘
「わりぃ、遅くなったッショ。」
部室の外に設置されているベンチで愛羅は
小さく丸まり座って寝息をたてていた。
他校の制服を隠すために着ている巻島のジャージに
すっぽり収まっている姿は愛しくて仕方がなかった。
「愛羅?」
隣に腰掛け、彼女を見つめると
伏せられた瞼には涙が浮かんでいる。
「泣いてる、、、?」
ソッと巻島が涙を拭うと、愛羅が身動ぎ
パタパタと瞼をしばたたいた。
「ゆぅすけ?」
巻島はぼんやりしている愛羅の額に
コツンと
自分の額を合わせる。
「、、、愛羅。なんかあったのか?」
彼女が答える前にソッと頭や頰を撫で、
少し濡れていたまぶたを拭った。
くすぐったかったのか、
愛羅はクスクスと笑みをもらす。
「帰るッショ。」
立ち上がって手を差し出すと
嬉しそうに自分の手を重ねる愛羅。
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少し先を歩いている鼻歌まじりの愛羅は
いつも通りと言えばいつも通り。
「こうやって、2人で帰るの初めてだね。」
愛羅が振り返る。
「尽八とね、尽八の彼女が
2人で帰ってるのいーなーと思って。」
そしたら、裕介に会いたくなったの!
ニッコリ笑って巻島の手をとる愛羅は
いつも通りのはずなのに
彼には、どこか違ってみえていた。
「、、、で、ホントは?」
巻島が立ち止まって問う。
彼女は目を見開いた。
「裕介には、隠し事できないなあ。
なんでもお見通しだね。」
フッと微笑んだ愛羅の瞳に涙が浮かぶ。
「、、、当分、会えなくなるの」
巻島は言葉を失った。
頻繁に会っていたわけではなかったが
面と向かってそう言われると嫌な予感がよぎる。
どこか遠くに引っ越すのか
俺の知らないところで重い病気にかかっているのか
それとも
他に好きな奴ができたのか、、、
「どうした、、ッショ?」
口をついて出た言葉が情けなさすぎて
我ながらダサいッショ。