第7章 手取り足取り:同学年総北 ほのぼの
数学のノートを
パラパラと見返していて気づいた。
巻島くんと2人で
勉強することはもうないのか。
色々あったな。
巻島くんの呆れた顔 狼狽えた顔
大きな丸を書く手
教科書をなぞる細い指
全部全部、見れなくなる。
巻島くんに頭を撫でてもらうこともなくなる。
そう考えていたら
ポタリ ポタリと
雫が 落ちた
きっと
この数日間が濃すぎたから
異常に寂しいんだ
きっと
この涙が渇いた頃には
もう 寂しさはなくなってる
きっと そう
ガラ、と教室のドアが開く。
「ちょ、神月!どうした!?」
私の姿を見た巻島くんは
やっぱり狼狽えた顔をしていた。
なんだか その姿がおもしろくて
泣いてるのか 笑っているのか
わからなくなった
「何かあった?」
巻島くんは持っていたタオルで
優しく涙を拭ってくれる。
色々伝えたいのに言葉にならなくて
首を横に振る。
何かなかったとも言えないけど。
「もう、大丈夫か?」
椅子に座っていた私の前に座り込んだ巻島くんが
私を見上げる。
私がウンウンと頷くと
巻島くんは立ち上がって私にタオルを渡し
「ちょっとまってな。」
と教室を出ていった。
涙を止めようと借りたタオルに顔を埋める。
ちょっと汗臭かったけど
巻島くんの香りがする。
「ふあ!?」
突然、首筋に冷たいペットボトルを当てられた。
犯人は、いつのまにか戻ってきた巻島くん。
彼はクスクス笑っていた。
「落ち着いた?」
「うん、ありがとう。」
巻島くんはお茶を私に渡すと私の一つ前の席、
自分の席に座る。
「どうだった、数学。」