第4章 背中合わせ:年下総北 悲恋
つい、アイツの腕を引いてきてしまった。
よく考えたら置いてきたらよかった。
いつも俺の後ろにいたはずの彼女は
今、目の前に座っていて
ボーッと窓の外を見ながらウトウトしている。
目の前に座っているその姿は新鮮で
まだ見ていたくて
用無しの本を使っているフリをしながら
その姿を眺めていた。
そういえば、俺、コイツの名前知らねぇッショ。
それにしても、なんて綺麗な顔で寝るんだろうか。
初めは姿を見れるだけでよかった。
少し話せるだけでよかった。
人間とは欲深いもので
ドンドンとエスカレートしていき
無性に彼女に触れたくなった。
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目が覚めると外は夕方になっていた。
「んー、、、でぇ?!」
そして目の前にはすやすや眠る玉虫先輩。
状況の整理をするのに数分必要だった。
この人、勉強しに来てるのに
寝てて大丈夫なんだろうか。
「、、、先輩?、、た、巻島先輩??」
起きそうにない先輩を揺すって起こす。
危ない。そのうち本人に玉虫先輩って言いそうだ。
「ん。」
身動いではいるが全く起きそうにない。
「、、巻島先輩!」
彼の隣の席に移動してもう一度、揺らす。
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あー
もう、うるさいッショ。
「、、巻島先輩!」
俺を起こすヤツを黙らせようと腕を引いた。
「ぅわわわっ」
力の加減が出来ていなかったのか、
彼女は勢いよく、俺の膝に倒れてきたから
腕の中に閉じ込める。
ちょうどいい抱き枕ッショ。
俺はボンヤリとそんな事を考えながら
再び意識を手放した。
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玉虫先輩はすっかり眠っている。
さっきの瞬間、何が起きたかわからなかったが
どうやら彼の腕の中にいるらしい。
どうがんばっても
運動部の腕力に勝てるとは思えないので諦めた。
サラサラの髪と少し低めの体温が私を包む。
普通に抱きしめられてるなこれ。
あー。
すっごい上質の毛布みたい。
ボーッと図書館の天井を眺めていると
「んっ。」
上質の毛布もとい巻島先輩が身動いで
私の首筋に顔を埋めていた。
ちょ、人が少ないとはいえ、
恥ずかしすぎるんですけど!!
ドンドンと彼の胸を叩くが
微動だにしない。
さすが運動部だな、おい。
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