第2章 想い想われ波乱万丈(桜月かりん様リクエスト作品)
「まったく、いきなり連れてこられたかと思ったら・・・」
義勇と並んで街を歩きながら、汐はしかめっ面をしながらため息をついた。
「楓に贈り物をしたいから選んでほしいって、最初からそう言えばいいのに。いきなりあんなこと言われたらびっくりするわよ」
「俺は最初からそう言ったはずだが?」
「言ってないけど。一字一句丸々言ってないけど?あんたが言ったのは『もうお前しか(頼める者が)いない。俺と(贈り物を選ぶのに)付き合ってくれ』だからね?楓のかの字も言ってないからね?」
義勇の言葉に汐は少しいらいらしながら辛辣に返す。元々何を考えているのか分からない眼をする上に、口下手で人との距離感がつかめない彼の性格が、汐は少し苦手だった。
が、義勇に命を救われたことがある汐は、彼の頼みも無下にはできず、何より友人の楓の名を出されては放っておくことはできなかった。
「で?楓への贈り物は決まってるの?決まってなくても候補ぐらいはあるんでしょ?」
汐がそう言うと、義勇は何も答えない。心なしか眉間に皺が少し寄っているように見える。
「・・・まさか・・・何も考えてないの?」
汐が問い詰めると、義勇は顔をしかめたまま静かにうなずいた。そんな彼を見て汐は思わず頭を抱える。
「あんたねぇ・・・柱だし年上だからこんなこと言うのは少し気が引けるけど・・・馬鹿じゃないの?っていうか、馬鹿じゃないの?無計画にもほどがあるわよ!」
「仕方ないだろう。俺は今まで誰かに物を贈ることなどしたことがない」
「だからって普段あれだけ慕われてるくせにお礼の一つもなし。あんたにとって楓は何なわけ?」
義勇は捲し立てる汐に何も答えることができず、ただただ彼女から浴びせられる罵声を一身に受けていた。