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【鬼滅の刃】ウタカタノ蕾【短編集】

第4章 一日遅れの祝い唄(竈門炭治郎生誕祭特別編)


「ん?なんだかおいしそうな匂いがするけれど、この匂いは・・・」
「ああ、これ。あんたのための贈り物を用意できなかったから、その代わり。っていうものじゃあないんだけれど・・・」

汐はもじもじと身体をよじらせながら、後ろ手に隠していた包みを差し出した。そこからは米と微かな梅昆布の匂いが漂い、炭治郎を刺激した。

「これは、もしかして梅昆布のおにぎりか?」
「正解!せめてあんたの好物をって思ったんだけれど、この季節じゃタラの芽はないから、あんたの好きな梅昆布のおにぎりを作ったのよ」

口に合うといいんだけど、と口ごもる汐に、炭治郎はパッと表情を輝かせて言った。

「とんでもない!お前が作ったおにぎりなら、おいしいに決まってる!」

炭治郎の嘘偽りない言葉に、汐の心臓が大きく跳ね顔に熱が籠った。

二人は近くの岩場に座り、汐は風呂敷を広げて炭治郎におにぎりを一つ手渡した。ホカホカのごはんと梅昆布の香りが、炭治郎の食欲を掻き立てる。

「いただきます!」

炭治郎は高らかに言うと、真白なおにぎりかぶりついた。そして、

「うまい!!」と、太陽のような笑顔で言った。
そんな彼を、汐はこみ上げてくる嬉しさをかみしめるように、口元を緩ませた。そして、自分の分のおにぎりを食しながら、二人の時間はゆっくりと流れていった。

やがておにぎりを食べ終えた二人は、星が瞬き始めた空を見上げた。

「そう言えば、汐はどうしてここでおにぎりを食べようなんて思ったんだ?」

炭治郎がそう尋ねると、汐は少し悪戯っぽく笑いながら口を開いた。

「多分あと少しだと思うから、もうちょっと待ってて」

汐の言葉に炭治郎は怪訝な表情をするが、その理由はすぐにわかった。
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