第4章 一日遅れの祝い唄(竈門炭治郎生誕祭特別編)
「あ、炭治郎さん!おかえりなさい」
「ただいま、すみちゃん。あの、もしかして汐がここに来ているのか?」
炭治郎が尋ねると、すみはにっこりと笑って裏山の方を指さした。
「汐さんが炭治郎さんに話があるそうです。すぐに行ってあげてください」
すみがそう言った途端、炭治郎は踵を返すと一目散に裏山へと走っていった。
険しい山道をものともせず、炭治郎は一心不乱に走った。前に進むたびに風に乗って流れてくる彼女の香りに、胸を高鳴らせながら。
「汐!」
炭治郎は息を切らしながら、目の前に立っている少女の名を呼んだ。すると汐は目を大きく見開くと、わき目もふらずに炭治郎の元へ駆け寄ってきた。
「炭治郎!!」
「汐!!」
二人は互いに名を呼びあいながら駆け寄り、どちらともなく手を握り合った。
「炭治郎、ごめん、ごめんなさい!あたし、あたしあんたの大切な日になんてことを・・・!」
汐は今にも泣きそうな顔で炭治郎を見つめ、それを見た炭治郎の胸が大きく音を立てた。
「何を言っても言い訳にしかならないから余計なことは言わない。でも、とにかくあんたに謝りたかったの。本当にごめんなさい」
「いや、いいんだそんなこと。お前だっていろいろ忙しいんだから仕方ないよ」
炭治郎はそう言って、泣きそうな顔の汐の頭を優しくなでた。陽だまりのような温かい手と、夕暮れのような美しい目が汐の心を落ち着かせていった。