第4章 一日遅れの祝い唄(竈門炭治郎生誕祭特別編)
すると、送ってからそう経っていないのにも関わらず、甘露寺が汐の屋敷に飛んできた。
「ぎゃあああああああああ!!!」
甘露寺は、汐の屍のような顔を見て悲鳴を上げた。そのあまりの驚きっぷりに、危うく乳房がこぼれ出そうになったほどだ。
「ど、ど、ど、どうしたのしおちゃん!!そ、そのお顔・・・!」
「あ~~~・・・・」
もはや顔どころか言葉まで無くしかけている汐に、甘露寺は慌てて駆け寄り何があったか問い詰めた。
すると、汐はぽつりぽつりと、炭治郎の誕生日をうっかり忘れてしまっていたことを話した。
「あたし、何やってんだろ。あたしにとって大切な人の生まれた日を忘れるなんて。きっとあたしはもう、あいつの隣に立つ資格なんかないんだ・・・」
いつもなら絶対あり得ない、後ろ向きな言葉が汐の口から零れ、甘露寺はこれはただ事ではないことを察した。
しかし、もう誕生日は過ぎてしまっているため、いくら後悔してももう遅いこともわかっていた。
「しおちゃん。厳しいことを言うようだけれど、今更後悔してもどうしようもないわ」
「うん、わかってる。わかってるけど・・・」
「でもね、このまま下を向いたままじゃ、絶対に駄目。あなたが炭治郎君のお誕生日を心からお祝いしたい気持ちはあるんでしょ?」
「それは勿論!だって、炭治郎が生まれた大切な日だもの」
汐は顔を上げてそう言うと、甘露寺はにっこりと笑っていった。
「その気持ちを炭治郎君にちゃんと伝えないと。一日遅れてしまってはいるけれど、あなたの気持ちが本当ならきっと彼ならわかってくれるわ」
「みっちゃん・・・」
「わかったならすぐ行動しないと!今日のお稽古はお休みにするから、しおちゃんはすぐに炭治郎君の所へ行ってきて!柱命令よ!!」
甘露寺の大声に汐は背筋を正すと、そのまま一目散に蝶屋敷に掛けていった。そんな彼女の背中を見て、甘露寺はまるで子供を見守る母親のような、慈しみの目を向けるのだった。