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【鬼滅の刃】ウタカタノ蕾【短編集】

第4章 一日遅れの祝い唄(竈門炭治郎生誕祭特別編)


それは七月十四日の、深夜に起った。
空は上弦の三日月が輝き、虫の歌う声が響く穏やかな夜。

だが、それは突然に破られた。

「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

何処からか耳をつんざくような悲鳴が聞こえ、心地よく歌っていた虫たちは驚いて飛び去り、眠っていた野良犬は飛び起き大声で吠え出した。

その騒ぎのせいか、蝶屋敷からは別の悲鳴が聞こえ、閑静な屋敷付近はたちまち喧騒に包まれた。

やがて夜も明け、新しい一日が始まるというのに、悲鳴の主、大海原汐は死人のような顔で歯を磨いていた。

(なんてこと、なんてことなの・・・?あたしったら、あたしったら・・・。この世で最も大切な日を忘れていたなんて・・・ッ!!)

鏡に映る悍ましい自分の顔を眺めながら、汐は絶望と後悔に苛まれていた。

昨日は、彼女にとって一番大切な人物、竈門炭治郎の誕生日だった。
しかし、恋柱・甘露寺蜜璃の継子である彼女は、いつものように稽古をつけてもらい、いつものように任務に出ていた。

その間、汐に当てての一通の文が届いたのだが、その時は汐の鴉のソラノタユウが体調を崩してしまい、文が汐に届くことはなく、炭治郎の鴉が置いて言った文にも気づくことがなかったんだ。

(炭治郎の誕生日の宴の知らせの文に気づいたのが、日付が変わる直前・・・!なんで気づかなかったのよ・・・!)

炭治郎の誕生日を祝えない上、贈り物すら買っていないことに、汐は今までにない程の後悔と絶望に包まれた。
それどころか、もういっそのこと消えてなくなりたいとさえも、思ってしまうほどだった。

そんな調子で稽古などできるはずもなく、汐は体調が悪いから稽古を休みたいと鴉を通して甘露寺に連絡をした。
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