第2章 想い想われ波乱万丈(桜月かりん様リクエスト作品)
「すまない、待たせたな。ん?お前も何か買ったのか?」
「うん。何も買わないっていうのもなんだか悪いし、それに・・・あたしも贈りたい人がいるのよ」
そう言って汐は包みを見ながら少しだけ頬を染めた。そんな彼女に義勇は口元に笑みを浮かべたが、ふと汐の青い髪に塵が付いているのが見えた。
「大海原。そのまま動くな」
「え?な、なに?」
「いいから。そのままじっとしていろ」
義勇はそう言って汐の髪に手を伸ばし、汐は驚いて瞳を震わせる。
その時だった。
「汐!!」
空気を切り裂くような鋭い声と共に、汐の左腕を突如誰かがつかんだ。
何事かと思い反射的に顔を向けると。
「お前っ・・・。いったいどういうつもりなんだ!?」
顔に青筋を浮かべた炭治郎が、怒りを孕んだ声を汐に投げつけた。
「炭治郎!?あんたなんでここに・・・それに、楓まで!?」
炭治郎の後ろには、目に涙を浮かべた楓が青ざめた顔でこちらを見ていた。
周りにいた人々は、何事かと足を止めて汐達を見ている。しかし、炭治郎はそんな民衆の視線など目もくれず、汐の手を掴んだまま睨みつけた。
炭治郎の眼からは怒りが、楓の眼には悲しみと悔しさが宿っている。何故二人がそんな眼をするのか分からず、汐は瞳を揺るがせた。
「どういうつもりって、何のこと?」
「とぼけるな!楓を悲しませるなんて、それでも友達なのか!?」
炭治郎の怒りはとどまることを知らず、掴んでいる手に力が入る。微かに走る痛みに汐が顔をしかめていると、
「・・・もういいよ、炭治郎」
「楓?」
「もういいの。汐ちゃんの手を放してあげて」
楓は静かな声でそう言うと、伏せていた顔を上げた。その両目からは涙が頬を伝い、地面に吸い込まれていく。
「冨岡さんが選んだ人なら、私が何かを言う権利なんて無いもの。でもありがとう。私を心配してくれて」
「え?ちょっと、楓?」
話が全く見えない汐に、楓は涙を流しながら笑顔を向けて言った。
「私と友達でいてくれてありがとう。冨岡さんとお幸せに」
それだけを言うと、楓は踵を返し人ごみの中へ消えていく。それを見た汐は瞬時に悟った。