第2章 想い想われ波乱万丈(桜月かりん様リクエスト作品)
(ん?)
ふと目についたものを手に取り、汐は義勇に見せる。それは雫と貝殻をあしらった小さな髪留めだった。
自分と同じ海育ちの楓と、義勇を彷彿とさせる雫の装飾品は、まるで二人の関係を象徴しているようだった。
「これくらいの髪留めなら任務中に激しく動いても邪魔にはならないだろうし、装飾品も可愛いからいいんじゃない?」
汐はそう言って振り返ると、義勇は汐に顔を近づけながらまじまじと髪飾りを見つめた。
(こうやって見ると、冨岡さんって男前よね。普通なら町の女の人とか放っておかないと思うけれど・・・この人結構面倒くさいからなあ・・・)
そんなことを思っていると義勇と目が合い、汐は慌てて目を逸らす。そんな彼女を彼は怪訝そうな顔で見ていた。
「会計をしてくる。お前はここで待っていろ」
「はぁい」
汐は少しけだるそうに返事をすると、会計を待つ間店の中を見て回ることにした。すると、店の隅で根付が集まっている場所を見つけた。
(あ、これ・・・)
その中に埋もれるようにして陳列されていたある根付に、汐は目を奪われた。せっかく買い物に来たのに、何も買わずに店を出ることもない。
幸い、値段も汐の所持金内に収まりそうだ。
汐はその根付をとると、義勇とは反対の会計所へ持っていき会計を済ませた。包装を希望するか聞かれると、汐は市松模様に似た包装紙を選んで包んでもらった。
義勇の方は何やら包装の種類が多く、少し悩んでいるようだったが、こういうのは本人が選んだ方がいいだろうと思い汐はそのまま外で待っていた。