第6章 身だしなみは誰かの為に
本丸にきて5日目。
御手杵様のお部屋で目覚めた私は、非常に困惑した。
長い腕が身体の後ろで絡まって離れない。
無理に解こうにも、力ではかなわないし、腕の中でもがけばもがくほど抱き枕の様にギュゥッッと抱き締められる。
「あ、あの…。御手杵様。御手杵様」
声をかけてみるけれど、
眉間に皺が寄るだけで、
御手杵様が起きる気配はない。
「すみません。御手杵様。起きて下さい」
「御手杵様!御手杵様!」
声のボリュームを上げてみても、一向に起きる気配はなく…。
「はぁー」
あきらめかけてため息をもらすと、
「あれあれ、困っとぉね」
声がきこえて、首をひねった。