第6章 身だしなみは誰かの為に
「痛くないか?」
「はい」
御手杵様は髪まで結って下さる。
「『突くしか出来ない』なんて、大嘘つきばい」
博多様が言う。
長く綺麗な指先で器用に結われた髪には、着物に良く似た色の玉が付いた簪が挿された。
「ばり美人やねぇ」
「い、いえ」
「『いえ』じゃないぞ。博多の言う通りだ。だから、もう『なんか』って言うなよ」
「…なん…か?」
「『私なんか』ってさっき言ったろ?もうやめとけよ」
ポンポンと頭に手を置かれて、
それが、
優しくて…
温かくて…
何だか嬉しくて、涙がこぼれた。