第6章 身だしなみは誰かの為に
少し考える様な仕草をした御手杵様が、
「ここで直すのはちょっとなぁ…。ついて来いよ」
そう仰るので、素直に従った。
先を歩くお二人は何やらひそひそ話をしている。
小声での話が聞こえてくる。
「もしや…」とか、
「しかし…」とか、
「取り決めが…」等と蜻蛉切様が躊躇うよう様子を見せてはいたけれど、
「帯を直すだけだろ?」と、御手杵様が返すとそれ以降口をつぐみ、
「取り決めを守ってる奴なんて居やしないじゃないか」
「乗る気が無いなら来るなよ」
の言葉に、何も言わずその場を後にしてしまった。
「…あの、私、何か粗相をいたしましたか?その…蜻蛉切様は…」
「気にすんな。あいつは生真面目だからな。それか、興味が無いのかもな」
「そう、ですか…」
「んじゃ、入れよ」
引き入れられたのは、御手杵様の自室の様だ。