第6章 身だしなみは誰かの為に
「村正ぁぁ!!そんな所で、何を無礼な事を…」
「はははっ。まぁた何かやらかしたのか?」
現れたのはずいぶんと身体の大きな男士様が2人。
「あぁ来ましたね。ファミリーの蜻蛉切デス。此方は蜻蛉切と同じ槍の御手杵デス」
「蜻蛉切様…御手杵様…」
お二人共、首をぐいと見上げなければならない程背が高い。
「さぁ、ファミリーが揃った所で、脱ぎまショウか?」
「脱ぐな!!だからお前は誤解されるのだ!!先程は何をしておった。何故、彩殿の帯を持っておる!!なんと無礼な!!場所を考えんか!!場所を!!」
私達のやり取りを知らない蜻蛉切様が一息に怒鳴る。
でも、その怒りの声など村正様は気にも止めて居ない様子だ。寧ろ、楽しそうにも見える。
「無礼なのはどちらデスか?女性の前でそう大きな声を出すと、怯えてしまいマスよ」
その言葉に、お二人が見下げる様にチラリと私を見た。
…えっ。え、あのー。
とたんに蜻蛉切様が大きな身体を曲げ、
「配慮が足らず、失礼致しました」
深々と頭を下げる。
「い、いえ…。大丈夫です。止めて下さい。頭をあげて下さい」
「否、貴女の前で自分の様な者が大声を出すなど…」
「あの、本当に気にしていないので。大丈夫なので…」
頭を下げる大男と、その前でワタワタする小娘。
端からみたら不思議な光景だろう。
御手杵様は肩を震わせて笑っているし、
村正様もどこかニヤついている。
きっとからかっている。
「huhuhu…。相変わらず蜻蛉切は生真面目ですね。彼女は帯の結び方がわからないそうデスよ。教えてあげたら如何デスか?」
フワリ
と宙に放おられた帯を
「よっと」
御手杵様がキャッチした。
「ではまた」
踵を返し、村正様は歩いて言ってしまった。