第6章 身だしなみは誰かの為に
「赤がいいんじゃない?」
「えー。ピンクでしょ?水色もいいね」
「赤は捨てがたいですが、彩さんには青や黄色も似合うと思います」
「白とか黒もいいんじゃねーの?」
いつの間にか増えた男士様が、私に何色の何を着せるかで揉めている。
「彩は脚が綺麗だから細身のパンツなんてどう?」
「ぜーったい、こっちのフリルのやつ」
「しょーとぱんつはどうでしょう?」
「このワンピースってやつはどうだ?」
本当に必要な下着や部屋着、スキンケア類は注文を済ませたので、
正直、後は何でもいい。
「大変デスね」
「村正様」
『じゃぁ、僕はこれで』と出ていった堀川様と入れ替わり、第一声『脱ぎまショウか?』と部屋に現れた千子村正様はとんでもない方なのかと思ったが、どうやらこの中では一番状況を察して下さる男士様の様だ。
「『出ていけ』と言ってもいいと思いマスよ」
「いいんです。私の為に選んで下さってますので…」
それに、加州様も、乱様も、籠手切江様も、太鼓鐘様も楽しそうだ。
寂しかった部屋がいつの間にか賑やかだ。
「お人好しデスね。彼らはアナタの為ではなく、自分や自分の身内の好みにアナタを着飾りたいだけデスよ」
「そう…ですか…」
「そうデス。それにしても、主の選んだものは地味デスね。アナタに着せるならもう少し華やかな色や柄があったのでは?」
開け放たれた箪笥の中身を見ながら、村正様が言う。
「加州様と乱様もそう仰っていました」
「huhuhu…目に浮かびマスね」