第5章 歓迎は心して受けよ
「君がその気なら僕は歓迎だけど、そうじゃないかな」
クスクスと揶揄するように笑いながら、髭切様が言う。
「えっ?あっ…」
「がっかりしちゃった?ごめんね。まず、湯殿の掃除を手伝ってくれる?君の望みはその後でね」
「い、いえ。そうではなくて…」
「選んでくれるなんて嬉しいなぁ」なんて、ぐいと腰を抱かれて、思わず身を返した。
「ありゃ?なんで逃げちゃうの?」と、髭切様が首を傾げる。
『相手』と言われてとんだ勘違いをしてしまった。
恥ずかしさで顔面が沸騰しそうだ。
それに…いつの間にか私が望んだ事になっている。そんな、意味では、無かったのに…。
「髭切様。失礼しました。とんだ勘違いを…」
「いいの。いいの。粟田口の子の後ってのが気に入らないけど。君の相手は大歓迎。僕だけじゃなくて、この本丸に居る全員がそうでしょ?」
「あ、あの。私は髭切様のお相手を望んだわけでは無く…」
「ありゃ?じゃぁ、掃除は僕一人でやらなきゃだめ?」
「否…それは、お手伝い致します」
「だったら僕も望みをかなえてあげなきゃね」
「そうではなくて、私は…」
続きを言おうとしたら唇に人差し指が当てられる。
「まぁとりあえず、湯殿へ行こうよ。主に怒られちゃうからね」
髭切様に…
なんと言うか、上手いことはぐらかされて丸め込まれているような気がしなくもない。