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【刀剣乱舞 R18】クロユリを食む

第4章 『約束』は頷くべからず


暑い…
苦しい…

「…っはぁ。はぁー」

全力疾走でもしたかのような肺の苦しさで目が覚めた。朝だ。


どうやら夢を見ていたらしく、そのぼやけた残像が頭に残っている。

残っているハズなのになんの夢だかはよくわからない。

「すまん。俺のせいだ」


声の方へ視線を向ければ、部屋の端に座っている薬研様の姿。


「えっ?薬研様?ずっと居たん…ですか??」

「一応な。あんた、あれからなんの警戒もなくすぐに寝ただろう?夜這いする刀が居ないとも言い切れんからな」

「よばい…ですか?」

「俺達は執着すると言っただろう?」

「ははっ」と笑う薬研様。

どうしたのかと首を傾げれば。


「俺達は執着するんだ…」

とまた呟いた。

「薬研様??」

また、悲しげに笑う薬研様。
困った様な、辛そうな表情。
この人は何故こんな表情をするんだろう??


「すまんな。俺達は持ち物だから持ち主に執着もするし、持ち主の影響も受ける。それは今の大将に限った事じゃなくて、元の主の影響も受けるんだ」

「元の主…ですか?」

「あぁ。一人の主に長く仕えた刀も居れば、たくさんの主の元を渡り歩いた刀も居る。それぞれの元の主に対する想いも違うし、鮮明な記憶がある奴も居れば無い奴も居る」

「だから、 まぁ…」と畳を見つめていた薬研様が顔を上げた。

「あんたが見たのは俺の記憶だ」


立ち上がった薬研様が二、三歩距離を詰めてくる。

目の前にしゃがみこみ、正面で私の顔を見据えると言った。



「存外…俺もあんたに執着したらしい」









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