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【刀剣乱舞 R18】クロユリを食む

第4章 『約束』は頷くべからず


「ほら、貸してごらん?」

目の前に立つ男士様は笑みを浮かべてはいるが、有無を言わさない威圧感を感じる。

「ありゃ?どうしたの?」

ぐいと顔を近づけられて、思わず一歩引いた。


「聞こえ無いのかなぁ?どう思う?えっとー、肘丸?」

「膝丸だ兄者。兄者が持たずとも、俺が持とう。ほら早く寄越せ」

いつの間にか、もう一人。
『兄者』と呼ぶと言うことは兄弟なのだろうか?


ずいっと目の前に差し出される2つの手。

神様に自分の膳を持たせるわけにも行かず、

「じ、自分で…持て、ますので…大丈夫です。」

喉から声を振り絞ってお断りをすると、


「うーん。でもね、せっかくだから粟田口の子じゃなくて僕を選んで欲しくてね。優しくした方が喜んでくれるかなぁって」

「そうでしょ?」とまた顔が近づき、とうとう固まってしまった。



「そうだ!我々は源氏の重宝。選ぶなら他の刀ではなく兄者を選ぶべきだ!」


また、『選べ』と言われた。

ざわざわと、男士様達が騒ぎ出す。

「ちょっと待て!!」と声が上がる。


選ぶとは何の事?
なぜ、私が誰かを選ぶの?
何の為に…?

分からない…。


すると、
不意に胸がざわざわとした。

締め付けられるような…
苦しいような…

ざりざりと押し寄せる不安感。

どうしたらよいのか、
何をすべきかがわからない。
この人達の事が、
向けられる視線が、
私がここに居る意味が、
何もかも全てがわからない。

怖い。怖い…。怖い…。



「彩?」

ふと、手元から膳の重みが消えた。

私から膳を取り上げた審神者様が心配そうに私の顔を覗き込む。

「どうした?」

問いかけられて、首を横に振った。
自分がどうしたのかが自分でもわからない。

ただ、怖い。何もかもが…

「彩?」

「…怖い。怖いです。怖いです」


「…わかった。髭切、膝丸、下がれ」

審神者様が二人に命ずる。


「秋田、ちょっと落ち着け」

今度は秋田様に声を掛けた。



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