第4章 『約束』は頷くべからず
「そろそろ夕飯の時間です!!」
広い広い本丸の案内を一通り終え、秋田様が言う。
「その前に湯浴みへご案内しますね。衣も着替えましょう」
「そうして頂けると助かります」
薬研様は室内の案内を終えると何処かへ消えてしまい…。
その後、まさか馬小屋や広大な田畑、更には裏山まで案内されるとは思わず、私の衣は汗でベタベタ。身体はダウン寸前。もうクタクタだ…。
「僕、お腹が空いてきちゃいました」
「私もです」
相変わらず手を引いて歩く秋田様。
幼い見た目と好奇心旺盛とみられる性格が相まって、失礼ながらも歳の離れた弟と歩いている様な気分にさせてくれた。
「彩様、彩様」
ちょいちょいと腕を引きながら秋田様が私を呼ぶ。
「彩様の好きな食べ物は何ですか?」
「好きな食べ物…ですか?そうですね…私はミルクレープが好きでした」
『ミルクレープ』という言葉に秋田様の目が輝く。
「それは、何ですか?」
「秋田様、ケーキはご存知ですか?」
私の問いかけに
「はい!前に小豆さんが作ってくれました」
と元気な声があがった。
「ミルクレープはケーキの名前です。小麦粉で作った薄い皮と生クリームを交互に何枚も重ねて作ります。間に果物を挟んだりもします」
私の説明に秋田様の目が一層輝いた。
「今度、作ってくれませんか?兄さん達と一緒に食べたいです!!」
「審神者様が許して下されば、皆さんで一緒に作りましょう」
「本当ですか?約束ですよ!!」
小一時間程前に薬研様に『安易に頷いてはならない』とお叱りを受けたばかりだけれど…
本丸を案内して頂いたお礼がしたくて…
私は「はい」と頷いた。