第7章 蝶々結びの秘め事 / 秀吉END
──── 一年半後、奥州
「政宗〜!」
「秀吉、美依!ちび姫もよく来たな」
「数日世話になる、元気そうだな」
「当たり前だ、文でも言っただろ?」
晴天の穏やかな日。
家族揃って青葉城を訪ねてみると……
政宗がにっかり笑い、嬉しそうに出迎えてくれた。
訪ねるのは約束であったし。
美依も子を産んで、少し体調も戻ったから。
信長様に休暇をもらい、奥州に来た。
政宗は相変わらずの様子で。
とても元気そうに見えるし、なんと言っても野性的な雰囲気は何も変わっていない。
馬から美依と子を降ろし、そして荷も降ろしていると…
政宗は美依から子を預かり、あやすように抱きながら、その顔を覗き込んだ。
「へぇ〜美依にそっくりだな、可愛い」
「でしょ?秀吉さん似ではなかったみたい」
「これなら俺の子って言っても平気だったかもな」
「政宗…そこを蒸し返すな、今更」
「冗談だ、真に受けるな。そんな気は更々ねぇよ」
軽く睨むと、政宗は可笑しそうに笑った。
どこまで本気なのか、さっぱり解らない。
まぁ政宗とは色々あったし……
と考え、文に書かれたことが思い出され。
俺は美依に子供と先に城に入るように促すと、二人の背中を見送りながら、その話題を切り出した。
「政宗」
「うん?」
「文にもあったが…お前見合いするんだって?」
「ああ…まぁなー」
政宗は頭の後ろで手を組み、気の抜けた返事をする。
そして、美依達の背中を見ながら……
政宗はどこか他人事のように言葉を続けた。
「跡取り世継ぎって、うるせぇからな。まぁどうなるが解らないが…そのうち誰かと夫婦になるんだし」
「まぁ、そうだが……」
「なんだぁ、秀吉?気になるのか?」
政宗は笑いながら俺の顔を覗き込み。
俺が若干複雑そうな顔をしているのが解ってか、小さく息をついて、そのまま空を仰いだ。
「いつまでも美依を想ってても不毛だろ」
「……」
「だがな、俺は思うんだよ」
政宗はその空の蒼さを自分の目に映して……
まるで、自分に言い聞かせるように呟く。