第7章 蝶々結びの秘め事 / 秀吉END
「政宗は認知してくれるって言ってくれて…私、正直嬉しくて。真っ直ぐ気持ちをぶつけてくれた政宗に甘えてた。何も言ってくれない秀吉さんと比較したりもして」
「そうだったのか……」
「でも保護されただけで、何も無かったからそれは信じてね。一緒には眠ったけど、それ以上は何も無かったから……」
「ん、解った」
『腹の子は、俺の子だ』
そう言った政宗は、真剣だった。
きっとあの時手加減してたら…本当に殺されていたかもしれない。
あいつも一城の主で、家臣達も居て。
混乱するに決まってるのに、美依を守る事を選んだ。
俺が刀を抜いたのは、負けたくなかったからだ。
その気持ちに、政宗の覚悟に。
俺は、俺なりの信念があるから。
────そして、譲れない想いも
「美依……」
「ん?」
「俺…お前と身体だけの関係の時、必死だったんだ。絶対繋ぎ止めて、振り向かせてやるって。でも…愛してるって言葉は言えなかった。似合わない気がして」
「秀吉さん……」
「そんな綺麗なもんじゃない。もっとえげつなくて…深い。でもそれをはなから伝えられてたら…こんな風に拗れなかったのかもな」
美依の顎を掴み、やんわり振り向かせる。
その瞳は、黒曜石みたいにきらきら輝いていた。
純で、真っ直ぐな美依。
もっと綺麗に愛せたらと思うけど。
出来ないんだろうな、俺には。
だって、底知れぬ愛情は……
それこそ情けないくらいに熱い。
「俺の価値は織田軍に在ることでしか見い出せなかったけど、お前が想ってくれるなら…お前にとっても意味ある人間になれるかな」
俺がそう言えば美依はびっくりしたように目を見開く。
そして、俺の頬に手を当て……
なんだかとても優しく笑った。
「秀吉さんはそのままで価値があるんだよ。私の好きな人をそんな風に言ったら、悲しいよ」
「美依……」
「私ももう、迷ったりしない。秀吉さんに与えられた分だけ…たくさん秀吉さんを愛していくよ」
(……ああ、言葉が出ない)
美依の言葉が胸に染みっていく。
俺は返事の代わりに、その唇をやんわり塞いだ。
恋仲になって初めてする口づけ。
それは甘く蕩けるように、深くなる。