第7章 蝶々結びの秘め事 / 秀吉END
────そして、二人で政宗を見送った
あの組紐が拾われなかった夜。
もしかしたら美依は……
政宗と一緒に過ごしていたのかもしれないと。
そう思ったら…また妬けてきてしまって。
どれだけ惚れてんだと、自分が情けなかった。
でも、どんな経緯があれ。
美依を引き止める事は出来た。
これから、俺の事情も正直に話して…
美依を本当の意味で納得させねば。
ちゃんと、想いを伝えるから。
今度こそ、自分の本音を、
────なぁ、美依?
「そっか、そんな事が……」
その日の夜。
俺は御殿の部屋で、膝に乗せた美依を背中から抱き締めながら、ありのままを話した。
自分の思い、見合いのこと。
自分には価値がないから……
こんな不器用にしか生きられない事も。
そしたら、美依は静かにそれを聞いてくれて。
俺の気持ちを汲み取るように、柔らかく言葉を紡いだ。
「お見合い、断っちゃって大丈夫だったの?」
「まぁ、俺から志願した事で信長様のご命令ではなかったから…信長様には気づくのが遅いと怒られたけどな」
「信長様、私達の関係知ってたの?」
「そうらしい。それにな、もしかしたら光秀も勘づいてたかもしれねぇ」
「え、嘘っ!」
「空気読むのが上手いからな、あいつも」
後から話を聞けば……
信長様には何もかも見抜かれていたらしい。
政宗と美依が奥州に行くと挨拶に来て。
それを俺に話したのも…俺が追うと思っていたからとか。
大名の娘にも上手く話をつけると仰ってくれた。
光秀にも、感謝しなきゃな。
何だかんだ心配をかけたし……
って、いつもと逆だな、これ。
本当に…織田軍にいて良かったと。
俺は心からそう思った。
「美依、お前は?」
「え?」
「いつ妊娠が解って、政宗とそんな話をしたんだよ」
「うん……」
美依は小さく頷くと、政宗との経緯を話してくれた。
具合悪くなって、妊娠に気がついて。
そして、政宗に保護された事。
それはやはり、組紐が拾われなかった……
あの晩の話だと言う事も判明した。