第2章 世界で一番お姫様 / ◆
「ふわぁ〜お腹いっぱい、幸せ……」
「結構食ったなぁ、俺も食べたけど」
やがて、美依は甘味を食べきり、満足そうににこにこ笑った。
良かった、どうやら笑顔は見せてくれるらしい。
俺が安心して、指の背で美依の頬を撫でると……
美依はまたいきなり仏頂面になり、俺を可愛く睨んだ。
「こ、このくらいじゃ機嫌直らないんだからねっ」
「ん、解ってるよ。次は何がしたい?」
「じゃあ……」
一回視線を泳がせた美依。
悩むように、押し黙っていたが……
『一日お姫様券』を手に持つと、それを俺の目の前で見せて。
まるでわがまま姫のように、ちょっとツンとした口調で言った。
「私の欲しい物を買ってくださいっ!」
(……なんだ、その可愛い願いは)
甘味を思う存分食べたいとか、欲しい物を買ってとか。
そんな『当たり前』の事でいいのだろうか?
もっとわがままになったっていいのにな。
そこが美依らしいと言うか……
本当にお前は底抜けに可愛らしい。
俺は笑って『了解』と言うと、店主に金を払い。
そして二人で店を出ると、その場で美依をひょいっと横抱きにした。
「ひゃっ……!」
「相変わらず軽いな、あんなに食ったのに」
「ちょっと、秀吉さん……?!」
「目的地までお運びますよ、お姫様」
「……っ」
「今日はお前をとことん甘やかす日だからな」
そのまま軽い身体を抱えて歩き出すと、美依は急いで俺の首に腕を回す。
でも、その説明では納得していないのか……
美依は俺に抱えられながら、ちょっと怒ったように声を上げた。
「一人で歩けるからっ……!」
「俺がこうしたいんだ、させてくれ。行く場所は呉服屋で大丈夫だろ?」
「え……?」
「お前の欲しい物くらい、俺は知ってるつもりだぞ」
俺がそう言えば、美依は下から驚いたような瞳で見つめてくる。
お前の欲しい物くらい……
お前を見ていれば、直ぐに解る。
そのくらい…俺は毎日毎日お前を目で追ってるんだ。
ずっと見てたって飽きる事なんて無い。
毎回刺激的で、色んな発見があって。
────また、お前を好きになるんだ