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〖イケメン戦国〗翡翠色の向日葵《豊臣秀吉短編集》

第7章 蝶々結びの秘め事 / 秀吉END






(あれ………?)




その日の夜遅く。
俺はいつも通り、美依の部屋を訪れた。

今日も部屋の前に蝶々結びの組紐を置いておいたから。

きっと美依はそれを拾い……
いつものように待っていてくれるだろう。
そう思っていたのに。

部屋の前まで来た俺は、いつもとは違う光景に、思わず首を傾げた。




「組紐…拾われてない?」




鮮やかな翡翠色をした組紐。
それは、俺が置いたままの状態で、廊下に置かれていた。

つまり、美依が拾っていないのだ。
今まで、こんな事は一度もなかった。
俺が部屋に行く合図として置く蝶々結び。

拾ってくれているとは、つまり…
俺を拒んでいない証拠であったのに。






────どくんっ






心臓が、嫌な音を立てる。
拾っていないとは、つまり……
美依は、俺を拒んでいるのか?

急いでそれを拾い、部屋の襖を開ける。
すると…そこには誰も居なかった。

布団も敷かれていない。
美依も、当然のように居ない。
俺は愕然とした。
ついに…この時が来てしまったのだ。









美依は、俺を嫌いになったか。
それは『拒絶』以外の何物でもない。









(仕方ないよな…美依にした事を思えば)


御殿に帰る気も起きず、廊下に座り込む。
足を投げ出し、後ろに手をついて天を仰ぎ…
溜め息をつけは、たたただ後悔だけが胸を締め付けた。

美依と身体だけの関係を持つようになって。
あいつが拒まないのをいい事に、俺は散々美依を好き放題に抱いた。

身体の中に、熱も何度も注いだ。
それはどういう意味か……
もちろん解ってやっていたのだけど。

むしろ"そうなればいいのに"と。
淡い期待を持ったほどだ。

でも───………
先日、俺は政宗に嫉妬した。
美依が俺との閨で、政宗の事を考えていたから。

美依は俺のもんなのにって。
勘違いも甚だしい、醜い嫉妬に駆られ。
それから、美依が離れていくかもと……
怖くなって、必要以上に行為を求めた。


もしかしたら、それが原因なのか?
ついに、美依に拒まれたのって。


己の情けなさに、また溜め息が出る。
程々自分に嫌気が差した、その時だった。







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