第6章 蝶々結びの秘め事《共通ルート》/ ♥
「……ごめんな?」
「えっ……」
「止まらねぇ」
「────痛くは、しないから」
何故か謝った秀吉さん。
抵抗し逃げ出す気があれば、私は逃げられただろう。
でも、私はそれをしなかった。
出来なかったんだ。
秀吉さんが与えてくれる快感。
それが気持ち良すぎて。
私は抗う事も出来ずにそのまま抱かれた。
触れる唇も撫でる手も
奥底に注がれる熱も……
全てが有り得ないくらい甘美で。
私は流されてしまった。
秀吉さんと……
衝動的に身体を重ねてしまったんだ。
────それから、
私と秀吉さんの奇妙な関係が始まった
秀吉さんが私の部屋に来る時は、必ず合図として蝶々結びの組紐を部屋の前に置く。
私がそれを拾ったら……
秀吉さんは合図通りに部屋に来て、私を抱く。
気持ちは通じていない。
まさに…身体だけの関係だ。
『なんで』とか『どうして』とか。
それは言わないのが暗黙の了解になっていた。
それを聞いてしまったら……
きっとこの関係は崩れ去ってしまう。
それをお互い懸念したからかもしれない。
ただ、お互いに気持ち良くなりたいだけなのかな。
何故この関係が崩れるのが嫌なのか…
私は自分の事なのに、全然解らない。
────だから、今夜も
「ぁっ、ぁんっ…ぁあ……っ!」
貫かれて嬌声が漏れる。
その熱に冒されて……
私は、みっともないほど喘いで乱れる。
触れる全てがまるで感電したように痺れて…
また快感の波に飲まれてしまう。
「美依……っ」
「……っあ、」
背中に覆い被さる秀吉さんが、耳元に唇を寄せて耳たぶを噛んだ。
そして腰を揺さぶられる。
私の身体は秀吉さん自身を飲み込み……
そして無意識に締め上げ、奥へ誘ってしまう。
こんなの、本当に駄目だって。
心の中じゃ解っているのに。
なのに、秀吉さんを拒めない。
嫌なんて、言えない。
どうして……
私、いつからこんないやらしい女になったの?
身体だけの関係でいいなんて、
気持ち良くなれれば、それでいいなんて……
そこに気持ちが無くても、
私は構わないって思うなんて。