第6章 蝶々結びの秘め事《共通ルート》/ ♥
「……っ」
「美依……」
「な、なに……?」
「……」
すると、秀吉さんは無言で私を見つめてきた。
触れられた肌から、ドキドキが伝わってしまいそうで怖い。
そして……
見つめてくる榛色の瞳に、意識しているのを見透かされてしまいそう。
私は思わず、きゅっと唇を噛んで秀吉さんを見つめ返した。
すると、秀吉さんは小さく息をついて。
次の瞬間───………
「────…………!」
二人の唇は、
重なり合っていた。
「んっ…んぅ……」
すぐさま唇を割って舌が入り込んできて。
いきなりの口づけは、早急に深くなる。
歯列をなぞられ、逃げる舌も捕らえられて、絡められ。
まるで蕩かすような巧みな口づけに……
考える暇もなく、思考が溶けだす。
角度を何度も変え、繰り返される触れ合いは、次第に湿り気を帯びて甘い水音まで響かせて。
やがてちゅっ…と言って唇が離れると、薄茶の瞳が熱を帯びて、私を見据えていた。
「ひ、秀吉さん……」
「……」
「なん、で……」
「……なんでだろうな」
「あっ……」
肩に手を置かれ、力を掛けられる。
気がついた時には、私は天井を見て仰向けになっていて……
私の身体の上に、秀吉さんが覆いかぶさっていた。
顔の横で手を付き、上から見下ろされる。
まだ秀吉さんの髪は濡れていたのか……
前髪からぽたり…と雫が落ちて、私の頬を濡らした。
「こうするのが自然かなって思って」
(……っ)
秀吉さんの言ってる意味が解らない。
こうするのが自然かなって……
それはつまり。
このまま私と秀吉さんは。
そう思ったら、顔がカッと熱くなった。
こんな、恋仲同士でもないのに。
確かに秀吉さんを意識してはいたけど……
こんな風になりたいとか、そう思ってた訳じゃ。
「美依……」
「……っ」
名前を呼ばれ、手首を押さえられて。
そして、その薄い瞳の色が色濃く光っているのを見たら……
私は何も言えなくなってしまった。
男の人の顔、見た事もないような。
こんな顔の秀吉さんは知らない。
こんな、熱に濡れているような……
欲情しているような顔を
私は知らない。