第6章 蝶々結びの秘め事《共通ルート》/ ♥
────男と女の関係なんて
時にその場の空気に飲まれて……
そしてあらぬ方向に向かうものだ。
それでも、まさか秀吉さんが
"それ"を求めてくるなんて──……
私にしてみたら、
本当に想像もしてなかった事なのだけど。
「秀吉さん…ただいま」
宿で部屋を借り、私は宿のご主人から浴衣を借りて、ついでにお風呂まで借りる事が出来た。
湯船に使って、身体を温めて……
そして浴衣に着替えて、部屋に戻ってみると。
秀吉さんは部屋で、濡れた着物を干してくれていた。
(……っ)
その姿を見て、心臓がどきりと高鳴る。
秀吉さんは上半身だけ着物を脱ぎ、そのたくましい身体を晒していた。
動く度に筋肉が隆々と盛り上がる。
ちょっと硬そうな質感の肌や、想像してたより細いその腰つきなんかを見ていると、なんか見てはいけないものを見ているようで。
思わずその場で固まってしまうと……
私に気がついた秀吉さんが、にこっと笑って手招きした。
「よーく温まってきたか?」
「うん……」
「じゃあ、茶でも淹れてやるから」
「あ、ありがとう……」
秀吉さんはそのままの姿で、テキパキとお茶を淹れてくれ。
私はと言うと、変にドキマギしてしまって。
秀吉さんと並んでお茶を飲んでも、味がよく解らないほど動揺していた。
(無自覚だよね、秀吉さん……)
その晒された上半身から醸し出される男の色気。
それを、秀吉さんはまったく気にしてないといった素振りで、私の隣でお茶を飲む。
もしかして、気にしてるの、私だけかな?
こんな風に意識してるのって、変…?
ドキドキを堪えるので、つい無口になってしまう。
そのままの状態で、お茶を飲んでいると……
秀吉さんの手がするりと伸びてきて、私の髪を指で梳いた。
「な、なに……?」
「髪は乾いたかと思ってな」
「さ、さっき拭いたから、大丈夫、だよ」
「そっか」
返答ですら、変にぎくしゃくしてしまう。
嫌だな、こーゆー空気……
変に秀吉さんの『男』の部分を意識してしまって。
私がそんな風に思って俯いてしまうと。
私の髪を梳いていた秀吉さんの手が……
やんわりと私の頬に触れ、顔を秀吉さんの方に向かせられた。