第2章 世界で一番お姫様 / ◆
「美依、この前は本当に悪かった」
「……」
「馬鹿みたいに光秀に嫉妬した、それを用意したのはお前に詫びるためでもあるし…お前の願いを何でも叶えてやりたいからだ」
「……何でも?」
「ああ、何でも。確かにご機嫌取りと言われても仕方ないが…俺は愛する可愛いお前のためなら、何だって出来るよ」
それは、本心からの言葉だから。
お前が言う事は全て叶えてやりたい。
どんな事でも、聞いてやりたい。
それは、心から愛しているからだ。
すると、俺の言葉に美依は少し目を見開き、俺をじっと見つめて……
やがて、ふいっとそっぽを向いた。
「私、怒ってるんだからね」
「うん、知ってる」
「このくらいじゃ機嫌直らないんだから。でも、秀吉さんがそう言うなら、この券使わせてもらう」
「美依……」
「本当に何でも言う事叶えてもらうからねっ」
そう言葉を紡ぐ美依は、少し頬が赤い。
もしかしたら、少し照れてるのかもしれないな。
本当に可愛い。
こうなると俄然なんでも叶えてやりたくなる。
そう、どんな事だって。
「ああ、勿論だ」
俺がそっと美依の手を握ると、美依はぴくりと肌を震わせ、またさらに顔を赤くした。
何でも叶えるよ、美依。
お前の言う事、願いなら……
どんな事だって、きっと愛しい筈だから。
────今日お前は、世界で一番お姫様だ
こうして、この茶屋から俺達の逢瀬は幕を開けた。
『一日お姫様券』
美依は何を願うのだろう。
普段は無欲なお前だから……
きっと、今一生懸命考えてるに違いない。
思いっきりわがままになれよ、美依?
俺は赤くなる美依を可愛いな…と思いながら、その握った手を引き、その甲にそっと口づけを落とした。
まるで誓いを立てるように。
美依が姫なら、さしずめ俺はお前の騎士かな。
そんな事をふっと思い……
きっと最高の一日にしてやると、改めて決心したのだった。
*****