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〖イケメン戦国〗翡翠色の向日葵《豊臣秀吉短編集》

第2章 世界で一番お姫様 / ◆






「────美依」




俺が名前を呼んで近づくと、賑わう中でも俺の声が聞こえたのか、美依はピッと背筋を伸ばした。

そのまま歩いて、美依の向かいに座る。
席についてみれば、美依は仏頂面をしながら、何も無い机の上に視線を注いでいて……

どうやら甘味なども食べずに、俺を待っていたようだった。




「悪い、待ったか?」

「……少しだけ」

「そっか、先に食ってていいんだぞ?」

「……」




(うーん…ぶんむくれてるって感じか)


美依の眉間にはシワがより、口元も尖らせて、いかにも不機嫌といった様子だ。

正直、そんな顔も可愛いけど。
いや、そんな事言ってたら謝る機会を逃してしまう。

せっかく久しぶりに顔が見れたのだから……
この前の事をちゃんと謝ろう。
襲って悪かった、馬鹿みたいに嫉妬したと。
で、光秀からは何を受け取ったんだ?


……それを聞いたら、台無しになるな


頭の中でぐるぐると考えが駆け巡る。
俺がまず何て言おうか思案していると……
美依は自分の懐に手を入れ、何かを取り出して、それを机の上に置いた。




「政宗から受け取ったよ、これ」

「え……?」

「こんなもので私のご機嫌取りをする気なの?」




美依が淡々と言うので、俺は思わずその机に置かれた『何か』を手に取ると、間近でまじまじと見た。

それは一枚の紙で。
そしてそこには、こう文字が書かれている。

『一日お姫様券、当日限り何度でも使用可能』




「一日お姫様券……?」

「そう、政宗が秀吉さんから預かって来たって言って、私に渡したの。これを使えば、何でも願いが叶うって」




(政宗、あいつ……)

まさか、あの会話ってこの事だったのか?
この『一日お姫様券』を使って言われた事は、素直に従えと。

それは、美依の願いを何でも叶える事。

そうすれば、美依も機嫌を直すのではと……
つまりはそーゆー事なんだろう。
俺に任せろと言うから、何をするかと思っていたが。


……これは案外、良い考えかもしれない


俺はその券をすっと美依の前に置くと、若干頭を下げながら美依に申し出た。






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