第5章 【誕生記念】Sugar HONEY-金平糖の罠- / ◆
「悪い……!」
反射的に謝ってしまうと、美依は顔を真っ赤にして俯いた。
これが零れるから、嫌がったのか。
当たり前だよな、さっきまでの行為を考えれば。
女心を解ってやれなかった事に気まずくて、再度そっと美依を褥に降ろすと……
美依は真っ赤な顔で困ったように笑い。
そして、腕を伸ばして、俺の頬に触れてきた。
「大丈夫、秀吉さんに愛された証拠だもんね」
「でもな、ちょっと無神経だった…」
「秀吉さん……」
「ん、どうした?」
「お誕生日おめでとう」
「それは、さっきも聞いたぞ?」
「でも、何回も言いたいの。まさかこうなれるとは思ってなかったから…恋仲として一緒に祝えるのが嬉しいの」
(美依……)
可愛らしいその発言に、トクンと心臓が鳴る。
俺だって恋仲になれるとは思ってなかった。
一方的な片想いだと思っていたし。
こうして愛し合えるのが、本当に夢みたいで。
まさか策にはめられて、こんな場所で抱くとは思わなかったけど……
……でも、幸せってこういう事を言うのかな
そう改めてしみじみ実感してしまう。
しばらく忘れていた感情だなぁ…なんて。
誰かと寄り添うなど、考えてもいなかったし。
天下統一を支える身で『たった一人』の相手を意識的に作ろうとして来なかったから。
でも、なんか満ち足りている気がする。
そんなのも…なんかいいな。
俺はそう思い……
俺は小さく笑みを作って、額同士をくっつけた。
「俺もお前と恋仲になれて、祝ってもらえて嬉しいよ。ありがとな」
「うんっ……」
「可愛いから、口づける。待ったは無し」
「え……んんっ!」
やんわり顎を掬い、その唇を少し強引に塞ぐ。
柔らかな温もりは、まだ蕩ける程に甘い。
金平糖の甘さが残っているのか?
……いや、お前自身が甘いんだな
それを知ることが出来て、浮つく程に幸せだ。
今日ほどに嬉しいと思った誕生日はない。
来年も再来年も、お前の誕生日も。
こうやって、愛し合って過ごせたらいいな。
そんな風に思いながら、柔い熱を堪能して。
────そしてまた、お前に溺れていくんだ