第4章 欠けた月に浮かぶ蜜影 / ◆
(ああ…もう誤魔化せない)
この格好を見られてしまったら、当然なのだけど。
それでも、俺はもう気持ちを隠せない。
隠すのは…もう止めだ。
月の光が全てを暴くように───………
俺の気持ちも晒される。
でも、それはさっきみたいな辛いものじゃない。
美依が気持ちをくれたから。
俺を、俺のことを、
────好きだと、言ってくれたから
「美依……」
「んっ……」
美依の名前を呼んで、今度は俺から口づけた。
上唇と下唇を軽く食み……
そして啄んで、ゆっくり離す。
さすれば、美依は顔を朱に染めて。
ああ、可愛いな。
そう思いながら、俺は美依の身体に腕を回し、自分にぐっと引き寄せた。
「……俺も、お前が好きだ、美依」
抱き寄せ耳元で囁いてやったら、美依の肌がぴくっと跳ねる。
そして耳たぶまで赤くして……
小さく『うん……』と消え入るように返事をした。
なんだ、これ。
先程まであった、切れそうに痛い気持ちが消え…
一気に幸せで満ちる。
美依を想って自慰に浸っていたのが、まるで嘘のようだ。
今こうして、美依が腕の中に居る。
それこそが、夢のまた夢なんじゃないか?
「美依……」
俺がまた顔を覗き込んで、手で顎を掬うと。
美依は潤んだ瞳で俺を見つめ、こくっと喉を鳴らした。
視線が絡めば、何を望んでるのかも解る。
美依は……
『俺』を欲してくれていると。
(────もう、夢じゃない)
この触れる温かな身体も。
俺を見つめてくる視線も……
全て、現実の美依で。
俺を求めてくれていて。
伝えてくれた気持ちも、言葉も。
何の偽りもない、真実なのだと。
これから訪れるであろう、
甘美な瞬間も───………
愛しいお前と迎えられる。
最高に、幸せな刹那を。
「あっ……」
ゆっくり身体を押し倒したら、美依は切なげに声を上げた。
さっきまで一人だった月影は二人になり……
その濃い影を、障子にはっきりと映し出していた。