第3章 世界で一番お姫様-始まり-/ ♥
「……っ」
すると、秀吉さんは一回唇を噛み。
次の刹那───………
「んっ…!」
まるで噛み付くように、口づけられた。
無理やり唇をこじ開けられ、すぐさま舌が入ってきて暴れる。
吐息まで奪われ、奥までまさぐられ。
そんな荒々しい口づけなんてされた事がないから、私はパニックになったまま呼吸も出来ず…
されるがままになって、身を震わせた。
「んっ…ぁっ、んんっ…!」
僅かな隙間から、甘い声が漏れてしまう。
何度も角度を変えては噛み付かれ、繰り返されるその口づけに、次第に立って居られなくなり。
膝がガクッと落ちそうになると、秀吉さんが片腕を私の腰に巻き付け、崩れるのを支えた。
「…っはぁ、はぁっはぁっ……」
そこでようやく唇が離れ、唇の間に透明な糸が伝う。
私は急いで酸素を取り入れ、呼吸をして…
息を荒らげていれば、秀吉さんは私の身体を壁に押し付け、耳元に唇を寄せてきた。
「嘘をつく子は悪い子だぞ、美依」
「えっ…?」
「何にもないのに、あんな可愛い笑顔、するわけない。もし普段から他の男にあんな顔を見せていたとしたら…耐えられねぇ」
「……っ」
(何を言ってるの、秀吉さん……!)
低く凄むような声色。
それを直接耳に注がれ、ぞわっと肌が粟立った。
秀吉さんはさっきの光秀さんとのやり取りを怒ってるんだ。
でも、私は普通にしていただけなのに。
なんでそんなに怒るの?
なんで…こんな事するの?
訳が解らないまま、私はなんとか秀吉さんの腕の中から抜け出そうと、必死にもがいて声を上げた。
「は、離し…!」
「嫌だ、お前が正直に言うまでやめない。何を受け取ったんだ?」
「だから、何でもないったら…!」
「何でもない、訳ないだろ……?!」
「あっ…!」
次の瞬間、秀吉さんが私の首筋に噛み付いた。
そして、ちゅうっと強く吸われる。
そんなとこに口づけたら、痕が見えちゃう…!
秀吉さんは絶対そんな事しないのに。
見える場所には痕なんて残さない人なのに。
頭の中が混乱して、訳分からなくなる。
こんなに秀吉さんが怒る理由も。
こんな乱暴なことをする理由も。
全て光秀さんが言った『嫉妬』なのか。
それにしたって、何でこんなに──……?