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〖イケメン戦国〗翡翠色の向日葵《豊臣秀吉短編集》

第3章 世界で一番お姫様-始まり-/ ♥





「御殿まで送っていく、行くぞ」

「あ、ちょっと秀吉さっ……!」




ずかずかと歩き出す秀吉さんに引っ張られ、早足で光秀さんの元を去りながら……

それでも振り返ってみれば、光秀さんは何やら不敵な笑みで、私達を見送っていた。



(なんで光秀さんは羨ましいなんて言ったんだろ)



自分を隠すのが上手い、光秀さん。
そんな光秀さんの真意は解らないが……
それでも『秀吉さんが嫉妬した』と言うのは、本当なのかもしれない。

現に、この後。
私と秀吉さんとの間で、一悶着が起きる。
この時の私は、そんな事知る由もなく……

ただ、やたら不機嫌な秀吉さんに、疑問を抱いていただけだったのだ。















*****















(何、この空気…気まずい)


手を引かれながら、無言で進む。
私と秀吉さんはひたすらに黙ったまま、御殿に向かって城下を歩いていた。

なんだろう、秀吉さんがやたら不機嫌である。
私の一歩前を歩く秀吉さん、顔がよく見えないけれど……

でも醸し出す空気というやつが、なんかトゲトゲしているのが解る。

さっきの光秀さんとのやり取りだろうか。
『嫉妬か?』と言われ、秀吉さんは口ごもっていた。




(まさかね、秀吉さんがヤキモチなんて)




ただ頭を少し撫でられただけだ。
別にやましい感情がある訳でもないし……
そのくらいで、大人な秀吉さんが妬くわけない。

でも、秀吉さんがなんか変だ。
なんでこんなに怒ってるの───………?




「────美依」

「は、はいっ!」




頭で考えを巡らせていると、いきなり秀吉さんから低い声で名前を呼ばれ、思わず上擦った声が出た。

すると、秀吉さんは立ち止まり私の方にゆっくり振り返る。

だが、その顔を見た瞬間。
私の心臓は一回大きく高鳴った。




(なんて顔、してるの……?)




無表情と言えば無表情なのだけれど。
でも微かに目は赤くなり、口は一文字で。
どちらかと言えば拗ねているような……

そんな秀吉さんを見るのは初めてで、私は何も言えずに立ち竦んでしまった。






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