第10章 【誕生記念】滄海と花明かりの煌 / ◆&♥
「んっ…ぁ……っ」
美依が肌を赤くさせ、震わせる。
ぴちゃんっ…と湯が跳ねた音がして、俺達を中心に湯が波紋を描いた。
こんなに白い肌を赤く染めて、可愛いな。
そう思いながら、俺の膝の上に座る美依の胸元を啄む。
少し強めに鎖骨の下に吸い付いたら、美依は焦ったような声を上げた。
「秀吉さんっ…そんな、とこ……っ」
「着物で隠れるだろ、多分」
「多分って…ぁっ……!」
「あー、本当にお前は可愛いな」
俺達は温泉の中で、気持ちを通わせていた。
勿論最初は互いに景色を見ていたけれど、湯に浸かった美依がやたら色っぽく見えて、自制心なんてものは呆気なく崩れた。
確かに、温泉から見える景色は絶景である。
遠くに村の灯りが見え、少し先には先程立ち寄った桜も見える。
それだけで癒されるのは癒されるんだが…
(俺はやっぱり美依に触れたい)
『生まれてきてくれてありがとう』と笑った美依がすごく可愛いと思った。
その後の口づけで、表情を溶かしたとこも。
可愛くて愛しくて、すぐさま触れたいと熱情が燻った。
だから、宿までは我慢したけど……
こうして温もりをすぐ傍で感じてしまえば、もう堪えることなど出来はしない。
濡れた白磁の絹肌や髪が、ひどく艶っぽくて。
─────お前を愛したいと、
馬鹿みたいに欲情してしまったから
「んっ…ふ……」
「……声、我慢するな。誰も居ないだろ?」
胸元を可愛がる事に必死になっていれば、美依がいつの間にか自分の手の甲を噛んでいた。
俺は顔を上げると、口元からやんわりと手を退かす。
さすれば、美依は口を半開きにさせていたけれど、また唇をきゅっと噛み締めた。
「こーら、唇を噛むな。痛いだろ?」
「だって、声が響いちゃう……」
「響いたって問題ないだろ」
「だめだよっ、誰かに気づかれるかもだし、あのご夫婦とかにも聞こえちゃうかも……!」
(……正直な話、その心配はないんだけどな)
『ある話』を俺は老夫婦から聞いていた。
その話からすれば、今温泉なりし宿なりしには俺達しかいない。
どういう事かと言えば、三成が手を回してくれていたお陰なのだ。