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〖イケメン戦国〗翡翠色の向日葵《豊臣秀吉短編集》

第10章 【誕生記念】滄海と花明かりの煌 / ◆&♥




「寄り道、大正解だったな」

「うん、こんな素敵な場所を発見できるなんて、すごく得した気分!」

「そっか。……少しは気分は晴れたか?」

「え?」

「お前、ずっと暗い顔してただろ」



思わず目をぱちくりさせて秀吉さんを見ると、秀吉さんは優しげな目元を穏やかに細めている。
やっぱり私が落ち込んでるのを見て、寄り道しようなんて言ってくれたんだ。
秀吉さんは優しい、優しすぎるくらい優しい。
そんな貴方に……

​────私は何をあげられているんだろう



「ごめんね、秀吉さん。気を遣わせて」

「そんな事ないよ。お前の笑顔になるなら、俺も嬉しいからな」

「私、頼りにならないなぁって落ち込んじゃってたの。秀吉さんの誕生日だから、私が喜ばせてあげたかったのに……結局は秀吉さんに頼っちゃったから」

「美依……」

「誕生日もまともに祝えないなんて、私情けないなって。私、秀吉さんを愛してるから…本当は私が秀吉さんを笑顔にしたいのに、全然だめで」



少し嘲笑混じりに言えば、秀吉さんはタレ目を丸くさせた。
もう少し、自分が頼りになる人間だったら良かったのに。
そうしたらこうやって気を遣わせる事もなかった。
もっと色々要領よく進められてたなら、今頃秀吉さんはもっと喜んでくれたかもしれない。

私、こんな頼りない人間なのに、秀吉さんの傍に居ていいのかな。



「っ……」



そう思ったら、なんだか言葉に詰まった。
また一気に苦しい思いがせり上がる。
どうしようも無く胸が軋んで…なんだか視界まで滲んできてしまった。
また秀吉さんに気を遣わせちゃう、それじゃ駄目なのに。
私……秀吉さんにとって、面倒な存在にはなりたくないよ。



「​────美依」



すると、秀吉さんが大きな手で私の頬に触れてきた。
優しく包み込まれ、秀吉さんを見上げてみたら……
秀吉さんは困ったように笑っていた。



「お前は全然駄目じゃない。卑下しすぎだ」

「だって……」

「俺はお前のお陰で、今すごく嬉しいんだ」

「え……?」



秀吉さんの言葉に目を見開けば、秀吉さんはそのまま私をゆっくり掻き抱く。
腕の中にすっぽり包まれると、甘い香の匂いがして、ひどく安堵を覚えた。




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