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〖イケメン戦国〗翡翠色の向日葵《豊臣秀吉短編集》

第10章 【誕生記念】滄海と花明かりの煌 / ◆&♥




(……秀吉さんは昔、流浪人だったって言ってたっけ)


いつだったか話してくれた、過去の話を思い出す。
もしかしたら、昔の生活がこうやって今の知識の糧になっているのかもしれない。
確かに道に迷ったら動かない星…北極星を探せとか、誰かに教えてもらった気がする。
……まあ、私には北極星がどれかも解らないんだけど。

秀吉さんは、すごいな。

引き返し始めた秀吉さんの後を追うようにして、私も馬の方角を変えた。
そのまま秀吉さんについて行く、私が案内すると意気込んでいたのに……
結局は秀吉さんを頼ってしまった。

誕生日ひとつまともに祝えない自分が、情けなくて無性に腹が立つ。
秀吉さんを喜ばすって決めたのに、今日は絶対しっかりするって誓ったのに。
秀吉さんの後を馬で追いながら、酷く惨めな気分になって心が沈んだ。










​────………だめだなぁ、
なんで私はこんなに頼りないの?










「きっとこっちだろ、後は一本道だな」

「……うん」

「良かったな、辿り着けそうで」

「……そう、だね」



明るく言う秀吉さんとは対照的に、私は重く暗い気持ちのまま返事を返す。
小さくため息をつき…また自分の頼りなさを情けなく思った。
正直、秀吉さんが間違いを修正してくれたお陰で、とても助かったのは間違いない。
それでも…今日ばかりは世話を焼かれたことを喜べなかった。


(私がしっかりしてれば良かった話なのに)


地図ひとつ読めずに迷ってしまうなんて、呆れられたかもしれない。
秀吉さんのことだから、余計に俺がしっかりしなきゃとか思ったかも。
秀吉さんに頼ってほしいなんて、夢のまた夢だ。
私は……好きな人を全然喜ばせてあげられない。

考えがどんどんドツボにハマっていく。
余計に沈んで、何度目かのため息をついた時……
前を行っていた秀吉さんが私の隣に馬をつけて、にっこりと笑みを浮かべた。



「少し寄り道してくか」

「え……?」

「さっきから微かに潮騒の音がするから、海が近いんだろ。気分転換に寄っていくぞ」



そう言って、秀吉さんは手を伸ばして私の手に重ねてきた。
目的地は海に近い温泉、潮騒の音が聞こえるのは、きっと宿も近い証拠なのかもしれない。
私が暗い顔をしていたから、秀吉さんは気を遣ってくれたのかな。




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