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〖イケメン戦国〗翡翠色の向日葵《豊臣秀吉短編集》

第10章 【誕生記念】滄海と花明かりの煌 / ◆&♥




「もう真っ暗だな、目的地はまだ遠いのか?」

「……」

「美依?」

「秀吉さん、ごめんっ…!」

「どうした?」



一旦馬を止めて俯く。
すると、秀吉さんは私のすぐ傍に馬を寄せた。
そのまま顔を覗き込まれたのが解ったけど、顔を上げられない。
これは確定だ、今の状況が完全に『そう』だと言っている。
もうばかばか、私のばか!
どうして、こんな大事な日に……!



「道に、迷っちゃったみたい……」

「……」

「こっちで合ってるはずなんだけど、そのっ…目的地が見えてこなくて、本当にごめんなさい…!」



(ああもう、秀吉さんが見れないよ)
少しでも違うなとか、変だなと思った時に地図を見れば良かったんだ。
こんなに真っ暗になってしまった、今がどこにいるかも検討もつかない。
これじゃ、今日宿に着けるかも怪しい。
あんなに『大丈夫だから!』『安心して!』と言っていたのに、私はやらかした。
一年で一番いい日にしなきゃいけないのに、こんな事になるなんて。

情けなくて、じわりと視界まで滲んでくる。
申し訳なくて、秀吉さんの顔を見れずにいると……
秀吉さんが私の頬に手を当て、ゆっくり上を向かせた。
視線がかち合ってみれば、秀吉さんは困ったように笑っていて。
私の頬を指の背で撫でながら、穏やかに声を紡いだ。



「そんな気がしてた。お前、最初は笑顔だったのに、だんだん不安そうな険しい顔になってたから」

「っ……ごめんなさい」

「謝るな、まだ軌道修正できるだろ。ほら…地図を貸してみろ、どこに行きたかったんだ?」



優しくそう言われ、私は懐に仕舞った地図を秀吉さんに手渡す。
秀吉さんはそれを広げ、視線を落とした。
目的地には印がしてある、その場所に行きたいのだと秀吉さんはすぐに解ったらしく……
空を見たり、辺りを見渡したりして、地図と見比べた後小さく頷いた。



「一回来た道を戻って、一本手前の道を東の方向だな」

「え……?」

「単に曲がる場所間違えただけだろ、地図はほぼ真東なのに、今北東に来てるからだ」

「そ、そうなの?」

「ああ、星の位置が北東だからな。一旦戻るぞ」



秀吉さんは朗らかに言って、今度は私の頭を撫でる。
私は秀吉さんの判断力に感心してしまった。
星の位置が違うなんて、私にはそこまでの状況判断は出来ないからだ。





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