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〖イケメン戦国〗翡翠色の向日葵《豊臣秀吉短編集》

第9章 【誕生記念】妹なんかじゃいられない! / ◆&♥





「そんな事は、しなくていい」

「嫌、私もしてあげたい!」

「今まで一回もやった事ないだろ?」

「……っわ、私にだって出来るよ……!」




(美依……なんか変じゃないか?)

覗き込んだ顔を見つめてくる美依は、なんだか泣きそうだ。
今まで気持ち良く蕩けていたくせに、今はどうだ。
何かを堪えているような…そんな顔。

いきなり化粧をしたり、香りを漂わせたり、"したい"と誘ってきたり。
ましてや"気持ち良くさせたい"なんて。
恥ずかしがり屋の美依から出る言葉ではない。

それに、それを"させた"事もないし。
なのに、私にだって出来るよ…とか、何をそんなに意地になってるんだ。
俺は優しく美依の頭を撫でると……
瞳をまっすぐ見つめ、穏やかに問いかけた。




「……今日のお前、なんか変だぞ。何かあったのか?」

「……」

「普段は紅も差さないだろ?それに褥に誘ったり、ましてや俺を気持ち良くさせたいとか…本当にお前の本心なのか?」

「っ……」

「怒らないから、理由を言ってみろ。な?」




すると、美依が悔しそうに唇を噛む。
途端に瞳に涙が溜まり始め、ついにはそれがぽろぽろと溢れ出した。
驚いて、指でその涙を優しく拭ってやると…
美依はされるがまま、弱々しい声でぽつりぽつりと話し始めた。




「私は、秀吉さんの妹じゃ、ないよ……」

「え……?」

「私は子供っぽいから、秀吉さんに釣り合わないから、だから…もっと大人の女にならなきゃって」

「……」

「でも、上手く行かなくてごめんなさい。もっと余裕のある女を立ち回れれば良かったのに……」






(美依………)






その言葉を聞き、胸が熱くなる。
それと同時に、愛しさが一気に押し寄せた。

お前、やっぱり堺での事を気にしてたんだな。
妹に間違えられた事、恋仲に見られなかった事。
だから、お前なりに頑張って『大人の女』で居ようとしたんだな。

まったく…可愛すぎて参っちまう。
お前のそういう健気な所が、本当に愛しい。
そういう姿勢はとても素晴らしいけれど…
少しだけ、勘違いしているな?
俺は、積極的で大胆なお前も、一生懸命誘ってくるお前も可愛いけれど。


────ありのままのお前が一番好きだ







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