第9章 【誕生記念】妹なんかじゃいられない! / ◆&♥
「ああ、悪い。大丈夫だぞ」
「それなら良いのですが…ご報告は以上です」
「報告、ご苦労様」
「そうだ、秀吉様の誕生日の宴なのですが、信長様が十八日の夜に行うと仰っていました。当日は美依様とゆっくりお過ごしくださいね」
すると、三成は話を切り替え穏やかに笑って見せる。
それは、俺の事を気遣った話。
信長様から明日十七日の公務は禁止だと、命令に近い口調で言われたのを思い出した。
(美依と一緒に休みをくださるなんて有り難い)
誕生日なんて、ただ歳を取るだけの日だと思っていたけれど……
毎年祝いの宴を開いてもらったり、何より美依が張り切って祝ってくれるから。
きっと今年も特別な日になるんだろうなぁなんて、そんな想像が出来て心が和やかになる。
そのためには、早くこのもやもやした気持ちを何とかしなければ。
光秀と一体何を隠しているのか。
この微妙に『嫉妬』している心を晴らしたい。
単刀直入に聞いたら…美依は答えてくれるだろうか?
────"やきもち"なんて情けない
俺は一体いつからそんな余裕がなくなった?
「お帰りなさいませ、秀吉様」
「ああ、ただいま。美依は?」
「はい、お部屋にいらっしゃるかと」
夜になって御殿に帰ってきた俺は、女中に出迎えられながら、若干疑問を感じて頭を傾げた。
美依が御殿にいる時は、大体玄関で出迎えてくれるんだが。
……おかしいな、何か理由があるのか。
『秀吉さん、おかえりなさい!』って笑顔で言ってくれると思っていたのに。
少し寂しさを感じながら、足早に自室に向かう。
早く美依の花が咲いたような、可愛い笑顔が見たい。
最近心が焦れているから…尚更。
薄暗い廊下を歩き、逸る心を抑えながら角を曲がり。
そのまま御殿の奥に進むと……
(あれ……?)
ちょうど自室の襖の所で、小さな人影が見えた。
襖の前でちょこんと立っていて、その雰囲気や格好から、誰だかすぐに理解する事が出来た。
「────美依」
名前を呼ぶと、こちらに振り向く。
だが、その顔を見た瞬間───………
ドキリと大きく心ノ臓が高鳴った。