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〖イケメン戦国〗翡翠色の向日葵《豊臣秀吉短編集》

第9章 【誕生記念】妹なんかじゃいられない! / ◆&♥





秀吉さんと私は数日前、視察の目的で堺の町を訪れていた。
秀吉さんは仕事に追われて、私達は数日滞在していたのだけど……

あれは、安土に帰る前日の事。
公務も終わり、私と秀吉さんは視察最終日に逢瀬をする事になっていた。
と言うか、私が町を見て回りたい…と言ったから、秀吉さんは無理やり最後の日を空けてくれたんだよね。

でも当日になって、秀吉さんは急遽の用事が出来てしまい、私とはそれが終わったら待ち合わせる事になっていた。
それで、私は露店を見たりして時間を潰し、秀吉さんを待っていたのだけど……




「あんた、一人なら飯くらい付き合えよ」

「お断りします、待ち合わせしてるので」

「いいじゃねぇか、付き合えって」




(うー…しつこいなぁ、お店の人困ってるし)

ある小物屋さんを見ていた時、男の人に捕まってしまった。
断っても断っても、粘り強く誘ってくる。
小物屋さんのご主人であるおばあさんは、私になんて声を掛けたらいいのか解らないのだろう。
オロオロとしていて、戸惑っていて。
本当にしつこくて、どうやって振り切るか悩んでいた。

そんな事をしていると、突如後ろから声が掛かり……
男の人と二人で振り返ったら、私の待ち焦がれた人がそこに立っていたのだ。




「秀吉さん!」

「その子は俺と待ち合わせしてるんだ。店の人も困ってるだろ、やめろ」

「ちっ……」




すると、秀吉さんを見た男の人はあっさりと引き下がり、逃げるように去って行ってしまった。
私はそこでやっと安心して、秀吉さんに笑みを浮かべれば……
秀吉さんは傍まで来て、私の頭を優しく撫でてくれた。




「ごめんな、俺が遅くなったから」

「ううん、大丈夫だよ。本当にありがとう」

「おやおや……」




店主のおばあさんは私と秀吉さんを交互に見て、やがてにっこり笑って。
この後だ、衝撃の言葉を聞いたのは。
おばあさんはさも当然のように……

私を見ながら、まるで孫にでも言うような口調で穏やかに言ったのだ。






「お兄さんが来てくれて、良かったですね」






(………は?)

まるで頭を鈍器で殴られたくらいの衝撃。
『お兄さんが来てくれて良かったですね』って……それはつまり。
私達は恋仲ではなく、兄妹に見えたという事だ。






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