第9章 【誕生記念】妹なんかじゃいられない! / ◆&♥
────最初は兄妹みたいな関係だった
秀吉さんは兄、私は妹。
でもいつしかそれは崩れ去り……
色んな困難を乗り越え、
私達は晴れて恋仲になったんだ。
でも、いつも付きまとうのは『妹』の影。
私は秀吉さんに釣り合わないのかな?
そんなに子供っぽいのかな?
私はもっと貴方に見合う私になりたい。
もっと綺麗で、大人で、余裕があって、
秀吉さんをドキドキとさせられるような……
そんな大人の女になりたい。
その為なら、どんな事でもするの。
そう……貴方を誘惑したり、
私にだって出来るはずなんだから。
「お前随分ふてくされているな…どうした」
気候もすっかり春めいて、暖かくなってきた三月のある日の事。
私は光秀さんに呼び止められ、振り返ると光秀さんは意地悪そうに笑ってそう言った。
(ふてくされてって…そんなに顔に出てたかな)
思わず頬に手を当てる。
ふてくされているなんて、確かに今の私はそうかもしれないけれど。
顔に出るなんて……やっぱり私は子供っぽい。
何となく気落ちして溜息をつけば、ヒヤリとした指先が私の顎に触れ、顔を持ち上げられた。
光秀さんは私の顔をまじまじと見ると、今度は少しだけ眉を顰めて言葉を紡ぐ。
「……少し前から元気がないようだが?」
「そんな事、ないですよ」
「そうだな、厳密に言えば…この前秀吉と堺へ視察に行った辺りからか」
「……」
「何かあったのか。悩みがあるなら吐き出してみろ、その容量の小さな頭で悩むより、よっぽど解決するかもしれないぞ」
(光秀さん…よく見てるなぁ)
『容量の小さな頭』とか若干意地悪を言われたのに、今は口答えをする気にもなれない。
光秀さんの言う事は、的を得ていたからだ。
そう、私は今すごく悩んでいる。
光秀さんの言う通り…秀吉さんと堺の町に行った時から。
こんな事話したら、呆れられるかもしれない。
平和な悩みだな…とか言われるかも。
でも、割と私は真剣に悩んでいた。
もしかしたら、光秀さんなら解決してくれるかも。
そう思い、私は口を開いた。
「実は、堺の町であった事なんですが……」
『その時』の感情を思い出しながら話し出す。
今考えても……本当に悔しいと言う気持ちしかない。