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死刑囚

第1章 徴集


部屋の奥にあるちょっとしたスペースへ移ると、刀を捧げ持つように言われた。

「刀にエネルギーを注ぎ入れるイメージで語りかけてください、力を貸して欲しい、と」

男に言われたように刀を捧げ持ち、刀へと熱を注ぎ入れるイメージで祈る。

力を貸してください
歴史を守るために
あのひとを取り戻すために
どうか力を貸してください

どのくらい祈っていたのだろう。気づけば桜吹雪の真っ只中にいた。

「あー、川の下の子です。加州清光。扱い辛いけど性能はいい感じってね」

桜吹雪の真ん中に、イケメンが立っていた。一体どこから現れたと言うのか。呆気に取られていると、だんだんと桜吹雪が治ってきた。

「…えーと、アンタが俺の主、かな?」

おずおずと、どこか不安げに話しかけてくるイケメン。ちょっと待てさっきまでこの部屋には私とあの男しかいなかったはず。どこから湧いて出た⁈

「あのさ、もしかして俺の声聞こえてない?」

「……え?あっ!!その、聞こえてます!すみませんボーッとしてて!!」

慌てて応えると、イケメンはホッとしたように紅玉の双眸を緩めて右手を差し出した。

「よろしくね、主。俺、いっぱい役に立つから、ジャンジャンデコってよ」

「は、はあ…よろしくお願いします、加州さん」

「清光。清光って呼んでよ。敬語も無しで、その方が俺は嬉しいからさ」

思いのほかフレンドリーな刀らしい。こちらの手を取るとブンブン振りながら笑いかけてくる。何故だろう耳と尻尾が見えるような気がする。

「無事顕現も出来た事ですし、本丸へ移動しましょうか。…っと、その前に少し準備が必要ですので審神者様はこちらへお願いします」

完全にその存在を忘れていた時の政府の男が再び口を開いた。早く来い、とその眼が語っている。慌てて移動しようとすると、清光が後ろからついて来る。カルガモの雛みたいでちょっと可愛いかも、などとは断じて思っていない。いや、少しは思いましたすみません。

「誠に恐れ入りますが、加州清光様はこちらでお待ち下さい」

「なんで?俺は初期刀なんだから主と一緒に行くよ」

「申し訳ございませんが、これも審神者様が本丸入りする為に必要な手順なのです。しばしこちらでお待ちいただけますでしょうか」
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