第2章 本丸
「それぞれの部屋についての説明は後程。次は審神者様のお部屋へご案内致します」
明らかに重要そうであるにも関わらず、あっさりと次へと移動するこんのすけに違和感を感じつつも、そんなものなのかと勝手に納得してついていく。少し歩いた所に、上品だがやたらと立派な襖がきちんと閉じられていた。
「こちらが審神者様のお部屋になります」
こんのすけに促されて襖を開けると、二畳くらいの何もない空間があった。まさかここが……?
「こちらは護衛の刀剣男士用の控えの間です。審神者様のお部屋は奥にございます」
流石にここはないだろうと思ったら、やはり違ったようだ。向かいの壁がまた襖戸になっている。そこを開けると、板の間にシンプルな木製の机になんだか高そうな椅子、サイドテーブルと本棚が配置された6畳程の部屋だった。机の上にはPCがあるが、本棚には何もない。
「加州清光様は控えの間でお待ち下さい。刀剣男士は許可なく審神者様のお部屋へは入れませんので」
「また⁈俺は主の初期刀なんだけど」
「これも審神者様の安全確保の為の仕様ですので」
どこまでも淡々とこんのすけは答える。事務的が過ぎると思うが、政府の用意したものなのだからそんなものなのかもしれない。
「ちなみに許可を得るにはどうすればいいの?こんのすけ」
「審神者様から時の政府へ申請書を提出していただく必要があります。が、火急の場合を除きほぼ通らないとお思い下さい」
「……火急の場合ってのは?」
「遡行軍による本丸侵攻が起きた場合のみとなります」
「後学のために聞くけど、本丸が遡行軍に侵攻される確率は?」
「ほぼゼロですね」
「……なるほど、そういうことね」
「審神者様はお察しが良くて助かります」
つまりは審神者の部屋には刀剣男士は入れない、と。
「とりあえず清光、少し待っててくれる?すぐ戻るから」
清光に一声かけて部屋へとはいる。さっさと確認して戻ってきた方が良さそうだ。ふと気づいて、こんのすけに訊ねてみる。
「ねぇ、こんのすけ。ここってこれだけしか物を置けないの?生活に必要なものが何もないけど」
そう、この部屋には生活感がまるでない。仕事をするために必要なものだけを置いてある。まあ、元いたところに比べれば椅子があるだけでもありがたいけれど。