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死刑囚

第1章 徴集


そもそも戦争状態なんて言われても、全く自覚の無い一般人にとっては何その厨二病?である。だが、そこにつっこんだら負けな気がしてスルースキルを総動員してみた。男は片方だけ口角を上げると、少しだけ口調に熱がこもったようだ。

「歴史が変われば、本来ならいるべき人がいなくなったりいないはずの人が存在したりします。あるはずの物がなくなったり、有り得ないはずの事象が発生したりするのです」

それでいいのかというくらい簡単な説明で終えられてしまったが、それはつまり詳細を話すつもりはない、ということだろう。無言を貫くことで続きを促す。

「これは貴女にも関係ある事ですが、最近、本来ならいなければならないある人物がその存在を消してしまいまして。我々時の政府としては大打撃なんですよ」

それは…と言いかけてまた口を噤む。

「その人には婚約者の女性がいたのですがね、その婚約者の家族は結婚に反対してまして」

突然の話題変更に面食らいつつ、多少の引っ掛かりを覚えて先を促した。

「まぁ婚約者の家族ってのがロクでもなくてね。表向き自営業ってことにしてましたが実は婚約者の女性を馬車馬のように働かせておいて稼ぎは全部むしり取る」

どこかで聞いたような既視感ある話に、まさかと声が漏れた。

「そうやって自分達は働かず搾取するだけして悠々自適の生活を送ってたんです。しかも両親は婚約者の女性を成金ジジイの所へ嫁がせるという形で売ろうとしてまして」

何故それを知っているのかと問おうとした口からは、声にならない吐息だけが漏れる。

「そんなでしたから両親は邪魔になる人物を消すために歴史修正主義者に接触を図りました。そして本来ならいるべき人物がその存在を消されてしまった、という訳です」
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