第4章 蝶屋敷で働く私と炭治郎様の物語〜嫉妬編
「…善逸」
今は少しだけ会いたくなかった声の主。
いつもより声のトーンが低いような気がした。
「あ、たんじろー!」
『炭…治郎様…っ』
「… リルル、大丈夫か?」
「ちょ、たんじろーそれどういう意味っ!」
『…だ、大丈夫ですっ、わ、私仕事してきますっ』
私は目を合わせることも出来ずにその場を去ってしまった。
それから仕事に戻るけど、炭治郎様を見かける度に胸が苦しくてあからさまに避けてしまっていた。
どうしよう、このままじゃ顔を合わせられなくなってしまう。
どうしたらいいのかわからないまま、仕事が終わってしまった。
仕事が終わってしまうと炭治郎様が迎えに来てしまう。
『…アオイさん! な、何かまだお仕事ないですか?』
「…ないです」
『…うっ、そ、そうですかっ』
残業でもすれば会わずに済むかと思ったけれどそう上手くはいかないみたい。
「それに、もう来てますよ、早く上がりなさい」
『…っ!?』
そこにはまだ会いたくない炭治郎様が立っていた。
アオイさんと入れ違いに中に入ってくる。
「… リルル、どうしたんだ? 今日様子が変だぞ?」
『…あ、のっ…』
私の目の前にまで近づく炭治郎様。
上手く言葉が出てこない。
『ご、ごめんなさいっ…』
私はいたたまれなくなってまたその場から逃げようとした。
「俺から逃げれるわけないだろう?」
『…っ!?』
腕を掴まれてぐっと引き寄せられて前から抱きしめられる。
『…は、離してくださいっ…//』
「どうしてだ?」
『……っそ、れは』
「…? 怒っているのか…?」
『…っ!?』
首元を嗅がれてびくっと反応する身体。
炭治郎様は私から少し距離を取る。
「…何があったのか、言ってくれ、俺が悪いなら謝るから、リルルに避けられるのは、辛いんだ…」
『…炭治郎様っ…』
本当に辛そうな炭治郎様を見て私は後悔した。
自分の都合で炭治郎様を傷つけてしまっていた。
私もいつものように過ごしたい。
だから今までのことを全て話した。