第8章 捌ノ型. 悪意には悪意を
その言葉を皮切りに、四方八方様々な所から隊士が立ち上がる。
「俺もあの子のお陰で死なずに済んだ。」
「私も!」
「俺もだ!」
「私達も!!」
続々とあがる刹那への感謝の言葉。
「そうだ、俺達は...」
「私達は...」
「「「皆彼女の優しさに救われてここに立ってる!!」」」
朱嘉達は静かに隊士の叫びを聞く。
目を閉じてひとつも取りこぼさぬように。
良かった。
刹那のしてきた事は、優しさは無駄ではなかった。
そんなことを思いながら叫びが止まった頃合いで、朱嘉が煙管の灰を落とした。
カンッ
っとその音だけが鳴り響く中、先程より顔色の悪くなった主犯達を見る。
「さあ、今一度問おう。お前達は正義か、悪か。」
「....っ。」
何も言えない隊士に、これまで沈黙を貫き通していたお館様が問う。
「君達は鬼殺隊の為に今回の事件を起こしたと言っていたね。でも、鬼殺隊に入ったいじょう刹那は私の子供も同然だ。そんな子を君達は貶め辱めようとした。とても残念だ。」
「お、お館様...」
助け舟が出ると思っていたのだろう。
驚愕の表情を浮かべた主犯隊士は仲間諸共項垂れてしまった。
絶望という言葉がぴったりなこの状況。
「朱嘉、と言ったね。産屋敷及び鬼殺隊は、今回の件による隊士5名の処罰を君に委ねる。」
最後にそう付け加えて、またお館様は口を閉ざした。